研究概要 |
本研究は、母体末梢血中胎児有核細胞を用いた新しい出生前診断法の開発を行うことを目的とし、その結果、以下の事項が明らかとなった。 1.正常妊娠・分娩後においては母体末梢血中胎児有核細胞は経過とともに減少し、分娩後3カ月で母体有核細胞の1/100,000未満の量となり同定不可能となる。 2.妊娠・分娩時に帝王切開術施行などにより胎児から母体循環内への多量の血液流入があった症例においても、分娩直後は相当量母体末梢血中に胎児有核細胞は存在するものの、その後は急速に減少し正常妊娠・分娩後と同様に分娩後3カ月で母体有核細胞の1/100,000未満の量となり同定不可能となる。 3.母体末梢血中胎児有核細胞を用いた胎児性別診断は可能である。しかしながら、同時に、胎児有核細胞を有効に分離・濃縮することができるか否かが本診断法確立の鍵である。 4.fluorescence-activated cell sorter (FACS)を用いて母体末梢血中胎児有核細胞を有効に分離・濃縮できる可能性が高い。 一連の研究成果により、母体末梢血中胎児有核細胞を用いた新しい出生前診断法確立の可能性は非常に高くなったと考えている。ただし、胎児有核細胞を分離・濃縮するためのFACSの条件設定等、我々の用いた方法には改善の余地も多く、より精度を高め臨床応用可能な診断法とすべく、今後研究を続けていきたいと考えている。
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