研究課題
1)新生児ヘルペスは増加の傾向にあるが、本疾患は妊娠中の単純ヘルペスウイルス(HSV)の初感染例においてリスクが高い。そこで、妊娠時にHSVの初感染となり得る抗体未保有者がどの程度にあるかを検討した。a)1994〜96年の3年間に妊娠577名のHSV抗体保有率をELISA法を用いて検討した。lgG抗体陽性者は298名(51.6%)で、残りの279例(48.4%)は陰性であった。20〜30年前はHSV抗体陰性者が10%以下であったが、現在約50%にも陰性者がいることは、新生児ヘルペスが今後増加する可能性を示唆している。b)妊娠中にHSVに感染した例がどの位あるかをlgM抗体を測定して行なった。37名(6.4%)に検出された。このうち24名はlgG抗体も検出されていることから、これらは既に感染しているHSVの再活性化によって出現したと解釈された。13名(4.3%)はlgG抗体が陰性か低い価であり、妊娠中に感染したことを意味する。幸い出生児に特に問題はなかった。2)サイトメガロウイルス(CMV)の胎内感染は時に、新生児・乳児に重症な後遺症を残す。妊娠中の初感染と既に感染しているCMVが再活性化されることを検討するために204例の妊婦についてlgM抗体を測定した。lgM抗体陽性者は、妊娠中期が2.3%、後期では9.3%と有意に後期の方が高い頻度で検出された。妊娠後期のlgM抗体陽性者は全てlgG抗体も陽性で再活性化によるものであることが判明した。このうち2例の子宮頸管からCMVが検出されている。妊娠中のlgM抗体の検出は、母子感染のハイリスク群を抽出することに役立つと思われる。
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