1.莢膜細胞による顆粒膜細胞の機能分化調節の研究 顆粒膜細胞は卵胞発育の過程で著しい機能分化を呈する。そこで、卵胞発育の進行にともない、顆粒膜細胞のホルモン産生能に及ぼす莢膜細胞の影響がどのように変化するかを検討し、(1)未熟な卵胞より得た顆粒膜細胞のEstradiol、Progesterone、Inhibin産生能は、莢膜細胞の存在下では低下すること、(2)逆に成熟卵胞より得た顆粒膜細胞のホルモン産生能は莢膜細胞の存在下で亢進するという結果を得た。 この成績は、莢膜細胞からのシグナルが顆粒膜細胞の機能分化を調節することを示唆する。即ち、卵胞発育の初期には顆粒膜細胞の分化を抑制し、発育が進むにつれ分化を促進する方向に働くと考えられる。著者らのこれまでの報告および今回の結果より、細胞間相互作用は、排卵周期にみられる劇的な卵巣機能変化をコントロールする重要な因子と推測される。 卵巣機能調節機能の中で、これまで最も重要と考えられてきたゴナドトロピンと、細胞間相互作用とがどのように関連するかは大変興味深く、次年度の研究課題としたい。 2.細胞間相互作用による細胞内超微細構造の変化の研究 コラーゲン膜上に培養された細胞を、コラーゲン膜面に平行および垂直の2方向に超薄切するテクニックを完成させた。現在、細胞内超微細構造に及ぼす細胞間相互作用の影響が、卵胞発育の進行に従い、どのように変化するのかを観察中である。
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