当該研究者らの従来の研究により、卵胞を構成する顆粒膜細胞と莢膜細胞の間には、互いの形態と機能を調節するシグナルの交換が存在することが明らかにされている。顆粒膜細胞は卵胞発育の過程で著しい機能分化を呈するが、この研究では、卵胞発育の進行にともない、顆粒膜細胞の機能分化を、莢膜細胞がどのように調節するかを検討した。 平成6年度には内分泌学的検討を行い、(1)未熟な卵胞より得た顆粒膜細胞のEstradiol、Progesterone、Inhibin産生能は、莢膜細胞の存在下で低下すること、(2)逆に成熟卵胞より得た顆粒膜細胞のEstradiol、Progesterone、Inhibin産生能は莢膜細胞の存在下で亢進するという結果を得た。即ち、莢膜細胞からのシグナルは卵胞発育の過程で、顆粒膜細胞のホルモン産生能を2相性に調節することを観察した。 そこで、平成7年度には、莢膜細胞の存在により、顆粒膜細胞内の微細構造がどのように変化するのかを観察した。この結果、(1)未熟な卵胞より得た顆粒膜細胞を、莢膜細胞と共培養すると、細胞内の脂肪滴が減少すること、RERが拡張すること、またミトコンドリアが延長し分枝すること、が特徴的であった。(2)一方、成熟した卵胞より得た顆粒膜細胞を、莢膜細胞とともに培養すると、脂肪滴やライソゾームは増量し、RERとフリー・リボゾームは極端に減少した。 以上の機能形態学的検討により、莢膜細胞は、卵胞発育の過程で、顆粒膜細胞の機能分化を2相性に調節すること、即ち、卵胞発育の初期には顆粒膜細胞の分化を抑制し、発育が進むにつれ分化を促進する方向に働くことが判明した。
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