研究概要 |
我々は内膜増殖症及び内膜癌の発生過程の違いを明かにする為に細胞周期調節因子にたいする抗体を用いて免疫染色を行った。婦人科手術摘出材料より子宮内膜病変部を採取し、新鮮凍結切片及びホルマリン固定パラフィン包埋切片を作成した。H.E.染色切片により組織学的に内膜癌の存在を確認するとともにサイクリンやcdc2ファミリーやRB,p53等のモノクローナル抗体を用いて免疫組織染色を行い、正常上皮細胞と内膜増殖症及び内膜癌の増殖制御の違いを検討した結果、増殖期内膜ではサイクリンD1,サイクリンB,cdc2、cdk2、cdk4が機能層腺上皮にまたサイクリンEは基底層腺上皮を中心に発現を認めた。またサイクリンD1,cdk4は間質細胞にも発現を認めた。分泌期においては主に間質細胞においてサイクリンD1,cdk4、cdc2の発現が観察されたが、腺上皮細胞においては発現は認められなかった。サイクリンEは増殖期に基底層腺上皮に、一方サイクリンD1,cdk4は増殖期では機能層腺上皮及び間質細胞に分泌期では間質細胞に発現しており、性周期および組織内部位でサイクリンに機能的な使い分けがなされていた。また内膜癌ではこれらの細胞周期調節因子の殆どに異常があり、その異常は内膜癌が悪性化するについて集積する傾向にあった。このように内膜癌では、性ステロイド受容体の発現異常とそれに伴う段階的な細胞周期調節因子の異常が癌の発生および増殖に重要な因子であると考えられた。これらの結果は今まで内膜癌の発生過程の考え方に新しい理解を加えるもので、この方向での研究は益々推し進めなければならなく、大変評価出来るものである。
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