研究概要 |
卵巣癌は組織型が多彩で治療成績の向上を目指して研究、解析するには多数例の集積が必要である。名古屋大学産婦人科と関連病院よりなる東海卵巣腫瘍研究会は、卵巣悪性腫瘍に対して共通の化学療法プロトコールのもとで、1979年より現在までの14年間に1292例の症例に対して治療を行っており、我々の研究会の症例数は欧米の研究グループと比較しても遜色ないものである。しかしながら、婦人科悪性腫瘍のなかでも卵巣癌は早期診断が困難なために進行期の症例が多く、シスプラチンを含んだ全身化学療法にもかかわらず未だ、一次治癒である寛解に至らない症例や寛解後の再発症例が多い。1986年から1989年のPVBとCAP療法の生存曲線を比較するとII期を除いて各進行期ともにPVB療法がCAP療法に優っていたが有意差は認めなかった。III期症例でみると24ケ月までは差が広がるものの以後は平行に両群ともに生存率が下降していた。組織型では粘液性、類内膜、漿液性、明細胞の順に予後良好であった。手術時に採取した癌組織のザイモグラフィーでは2001,130,92,83,72,66kDのゼラチナーゼが認められ、92および72kDのバンドはすべての癌組織が確認された。200,130,83kDは卵巣癌組織においては子宮頚癌、体癌組織よりも出現頻度が少なかった。92kD/72kD比は卵巣癌組織は子宮頚癌組織よりも有意に低値であった。66kD/75kD比は卵巣癌組織は子宮体癌組織よりも有意に低値であった。TIMPI活性は卵巣癌組織で子宮頚癌組織よりも有意に高値であった。従って、卵巣癌は子宮癌より転移能は低いと考えられるが、転移浸潤形式を考えると実際には腹腔内への播種が多く今後は腹膜への接着の観点からの研究が必要であろう。
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