私たちは、前年度において、in vivo whole cell recordingの方法を用いてラット胎仔脳の上丘ニューロンの電気活動を記録することができるようになった。本年度では、母体脳刺激による胎仔上丘ニューロンに対する影響を検討するための基礎実験として、主としてin vivo whole cell recordingを用いて上丘ニューロンの膜特性のデータを取った。さらに、このデータをもとに、母体視床下部刺激による胎仔上丘ニューロンの膜特性の変化について一部検討することができた。現在までに得られている結果は、以下のようである。 1)妊娠後期のラットをウレタン麻酔し、睛帯で母体とつながった胎仔の上丘ニューロンに対してin vivo whole cell recordingを行った。 2)胎仔上丘ニューロンの静止膜電位は、46-60mVであった。 3)脱分極パルスによって誘発される活動電位の振幅は、31-48mVであった。活動電位の振幅の1/2の高さで測定した活動電位の幅は、8-25ミリ秒であった。 4)母体の視床下部刺激後、活動電位の振幅は約15%増加し、活動電位の幅は約26%減少した。 5)以上より、胎仔上丘ニューロンの膜特性は、母体視床下部刺激によって未熟型から成熟型に移行する可能性が示唆された。
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