研究課題/領域番号 |
06454479
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研究機関 | 慶応義塾大学 |
研究代表者 |
野澤 志朗 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (90051557)
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研究分担者 |
久布白 兼行 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (50170022)
青木 大輔 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (30167788)
塚崎 克己 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (40118972)
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キーワード | フコース転移酵素 / ガラクトース転移酵素 / 子宮体癌 / 卵巣癌 |
研究概要 |
我々は、子宮体癌由来株SNG-IIより分別した亜株SNG-S(Lewis^b型糖鎖発現亜株)とSNG-W(H型糖鎖発現亜株)のフコース転移酵素(FT)の活性を測定し、α1-2FT、α1-3FT、α1-4FT活性のなかで、α1-4FT活性のみがSNG-SはSNG-Wに比べ亢進していることを明らかにしてきた。さらにα1-4FTをコードするFT-III遺伝子の発現はSNG-SではSNG-Wに比べ強く認められることが判明した。そこで、以上のようなフコシル化糖鎖の発現機序が異なるSNG-SとSNG-Wについて両者の細胞生物学的特性について検討した。in vitroで両細胞の血管内皮に対する接着能を検討したところ、SNG-WはSNG-Sに比べ約2倍の細胞が接着した。また、in vivoにおける転移能については両亜株をヌードマウスに尾静注した結果、SNG-WはSNG-Sに比べ有意に多くの肺転移が認められた。さらにSNG-Wの血管内皮に対する接着は、抗H型糖鎖抗体によって濃度依存的に阻害され、一方他の血液型関連糖鎖に対する抗体では阻害されなかった。同様にin vivoのヌードマウスを用いた肺転移実験においても、SNG-Wを抗H型糖鎖抗体によって処理した場合、未処理の場合に比べその肺転移の頻度は低下した。以上の結果から、Lewis^b型糖鎖やH型糖鎖の発現の有無は、体癌細胞における接着や転移能といった細胞生物学的特性に関与することが明らかとなった。とりわけH型糖鎖を発現する体癌細胞は高い転移能を有する可能性が示唆された。 さらに、卵巣癌患者血清で特異的に上昇するgalactosyltransferase (GalT) associated with tumor (GAT)は、GATだけを捕捉するモノクローナル抗体MAb8513ならびに通常のGalTとGATの両者を認識するMAb8628を用いたdouble-determinant EIAによって測定可能である。一方、GATと通常のGalTは同一遺伝子産物であることが判明しているので、卵巣癌患者の術前と術後の血清を用いてGATと通常のGalTが腫瘍の動向にともなっていかに変化するかをMab8628によるwestern blotの手法を用いて対比した。その結果、GATは腫瘍の摘出にともない速やかに低下した一方、GalTの変化は様々で必ずしも腫瘍の動向を反映しなかったことから、GalTは種々の組織から由来し、血清中の総GalT量を修飾していると考えられた。
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