透明帯蛋白質に結合する精子リガンド分子の性状分析と遺伝子クローニング

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06454481
• 研究機関: 兵庫医科大学
• 研究代表者: 香山 浩二 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (00068496)
• 研究分担者: 小森 慎二 兵庫医科大学, 医学部, 助手 (60195865) ; 山崎 則行 兵庫医科大学, 医学部, 助手 (50174644) ; 赤谷 昭子 兵庫医科大学, 医学部, 助手 (50212402)
• キーワード: 受精 / 精子先体反応 / 透明帯 / 精子リガンド / 第二精子レセプター / プロアクロシン / pZP1

研究概要

哺乳動物の受精において、精子は卵表面の透明帯と相互作用を行いつつ進入していく。受精能を獲得した精子は透明帯に出会うと精子receptorを介して接着(primary binding)し、先体反応を誘起される。これによって精子は先体酵素を活性化し、透明帯を貫通することになる。この時精子はおそらく先体内膜に存在する分子で透明帯の第二精子receptorと結合を維持(secondary binding)しているとか考えられる。昨年度、ブタ透明帯成分の一つpZP1が先体反応を起こした精子と反応することを蛍光抗体法により明らかにしたので、本年度はpZP1と反応する精子側リガンド分子を同定することを目的とした。方法としては先ずブタ射出精子を酸処理し、先体粗抽出物を得た。これをSDS-PAGEで分離後、イモビロンにトランスブロットし、リコンビナントpZP1(10μg/ml)を反応させた。次にpZP1に特異的に反応するMAb-5H4を反応させ、さらにパーオキシダーゼ標識抗マウスIgGを反応させた。その結果、Mr55Kと40Kに強く反応するバンドが検出された。イモビロン上に転写した各々の蛋白を切り出しエドマン分解法でアミノ末端側アミノ酸配列を分析したところ、55KのバンドからはVVGGMSAEPGAの配列が、また40KのハンドからはSDVFTQYIGDの配列が得られた。前者はブタ精子プロアクロシンの配列と一致したが、後者は該当するものがなく未知のリガンド分子であることが推定された。そこでこの配列をもとに合成オリゴプライマーを作成しPCRにより遺伝子の単離を試みた。その結果0.9kbpのcDNAがクローニングできた。このcDNAは40K分子を充分コードできる長さであり、また配列は既に報告されているものに相当するものがなく、新しい物質をコードしていると考えられた。

研究成果

• [文献書誌] HASEGAWA, A., INOUE, M., KOYAMA, K. and ISOJIMA, S.: "Binding of a recombinant pZP1 (1-198) zona protein to acrosome-reacted human sperm." Proceedings of the 8th Annual Meeting of Japan Society for Immunology of Reproduction.8. 63-66 (1994)
• [文献書誌] HASEGAWA, A., YAMASAKI, N., INOUE, M., KOYAMA, K. and ISOJIMA, S.: "Analysis of an epitope sequence recognized by a fertilization blocking monoclonal antibody (MAb-5H4) against a porcine zona pellucida glycoprotein (pZP1)." Journal of Reproduction and Fertility.105. 295-302 (1995)
• [文献書誌] TAYA, T., YAMASAKI, N., TSUBAMOTO, H., HASEGAWA, A. and KOYAMA, K.: "Cloning of a cDNA coding for porcine zona pellucida glycoprotein ZP1 and its genomic organization." Biochemical and Biophysical Research Communications. 207. 790-799 (1995)
• [文献書誌] TSUBAMOTO, H., HASEGAWA, A., INOUE, M., YAMASAKI, N. and KOYAMA, K.: "Bindings of a recombinant porcine zona protein (pZP1) to acrosome-reacted spermatozoa." Proceedings of International Symposium on Prospects of Zona Pellucida Glycoproteins for Immunocontraception and 7th Annual Conference of Indian Society for the Study of Reproduction and Fertility.(in press.). (1996)
• [文献書誌] 長谷川昭子、井上みゆき、山崎則行、香山浩二: "卵透明帯の第二精子レセプターと反応する精子側リガンドについて" 日本受精着床学会雑誌. 13(発表予定). (1996)