1)動物実験 マウスを使用して外耳道のアポトーシスを観察した。外耳道はマウスにおいて出生時閉鎖されている。このため、平成6年度には出生後の新生仔を用いてツネル法を行ったが、他の部位の皮膚とアポトーシスの頻度は差がないように思われた。今年度は胎仔を使用してツネル法を行った。外耳道には胎生16日にはツネル法陽性の細胞が観察された。透過電顕でも外耳道にアポトーシス小体が観察された。外耳道の管腔形成の開始は、従来考えられていたよりも早期に生じていると考えられた。 2)臨床 (1)ヘリカルCTからISG社製ALLEGROを用いて3次元構築を行い、その有用性を検討した。従来のCTに比較して術前に多くの情報を得ることができ、有用性が高いと考えられた。問題点として、アブミ骨はCT上、軟部細織様に淡く抽出されるので、3次元構築像を得るための域値設定を他の耳小骨とは別に行う必要があり、処理が煩雑であった。奇形の程度の顕著な時、耳小骨の認識が困難であった。外耳道閉鎖症において、三次元再構築象上でより正確な情報を得るためには、手術症例の積み重ねにより、奇形耳の解剖に精通しておく必要があると考えられた。 (2)先天性外耳道奇形の手術に対して、ナビゲーションシステム(ISG社製のViewing Wand Systein)を利用し、その有用性を検討した。問題点として、Viewing Wandの扱いには習熟を要し、今回の手術の印象では2mm位の誤差がでた。これは経験を積み重ねることにより改善できると思われた。ナビゲーションシステムを補助的に使用することにより、先天性外耳道閉鎖症の手術が、より安全に施行できると考えられた。
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