研究概要 |
昨年度までに外耳道閉鎖症の臨床X線学的研究およびナビゲーション手術を施行した。今年度は外耳道閉鎖症を発生させるため、3,3dimetyl-1phenyltriazeneを妊娠母獣に投与した。奇形胎仔は外耳道閉鎖症などの外耳奇形の他に中耳奇形も生じる。外耳道奇形耳の手術の際の実際に問題になるのは、顔面神経麻痺を引き起こすことなく聴力改善ができるかということである。このためには外耳道閉鎖症に合併する中耳奇形の病因、病態を究明する必要がある。このため、顔面神経と特に聴力改善の際に問題となるアブミ骨および卵円窓を中心に奇形病態を検討した。3,3dimetyl-1phenyltriazeneが中耳発生障害をマウスに起こし得る投与時期は、胎生8-12日であり、これはヒト胎児においては4-6週の器官形成期に相当する。中耳奇形の病態は以下のようにであった。(1)Annulus Stapedialisの発生障害(後脚欠損・ライヘルト軟骨とアブミ骨上部構造の治療)(2)Lamina Stapedialisの形成障害例に卵円窓開窓不全がほぼ全例にみられた。アブミ骨外倒偏位倒に底板二重構造欠損例が多くみられた。(3)アブミ骨動脈欠損時に、アブミ骨のリング状形態をとらない例がみられた。3,3dimotyl-1,phenyltriazeneの催奇形性について、過剰vitamine A投与と同様に聴器領域の間葉系に由来する組織の形成不全を起こし得た。特にアブミ骨・卵円窓・内耳骨包の形態形成に影響を与え、顔面神経の走行にも影響を与えていると考えられた。 また、正常マウス外耳道の形成におけるアポトーシスの関与を明らかにした。従来に考えでは、外耳道管腔形成にアポトーシスの関与が疑われていたが、アポトーシスは外耳道の上皮板形成に関与し、管腔形成には関与していないことを明らかにした。管腔形成は上皮細胞の分化(角化)による解離によって生じることを明らかにした。
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