研究概要 |
本研究(外耳道閉鎖症の実験発生学的ならびに臨床X線学的研究)の臨床対象である外耳道閉鎖症を発生させるため、3,3dimetyl-1phenyltriazeneを妊娠母獣に投与した。奇形胎仔は外耳道閉鎖症などの外耳奇形の他に中耳奇形も生じる。外耳道奇形耳の手術の際の実際に問題になるのは、顔面神経麻痺を引き起こすことなく聴力改善ができるかということである。このためには外耳道閉鎖症に合併する中耳奇形の病因、病態を究明する必要がある。このため、顔面神経と特に聴力改善の際に問題となるアブミ骨および卵円窓を中心に奇形病態を検討した。 また、正常マウス外耳道の形成におけるアポトーシスの関与を明らかにした。従来に考えでは、外耳道管腔形成にアポトーシスの関与が疑われていたが、アポトーシスは外耳道の上皮板形成に関与し、管腔形成には関与していないことを明らかにした。管腔形成は上皮細胞の分化(角化)による解離によって生じることを明らかにした。 臨床例での手術成功率を向上させるために、外耳道奇形耳症例に対してヘリカルCTを撮影し、外耳および中耳の三次元構築を施行した。三次元CTによって、ある程度、耳小骨の奇形の程度、耳小骨と鼓室腔の立体的関係、顔面神経の走行などを術前に把握することが可能になり、手術例の選択に有効であると考えられた。さらにヘリカルCTにナビゲーションシステムを組み入れて、外耳道奇形手術を施行した。このシステムを使用すると現在の手術部位がaxial,coronal,frontalのCT上及び三次元CT上に示される。造成される外耳道と鼓室腔および顔面神経との関係が容易に認識できるため、従来より合併症の危険性が少なくより安全に手術が施行できると考えられた。
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