上顎癌22例に対して、低濃度化学療法、キラー細胞による免疫療法、放射線療法の癌集学治療を行った。まず患者の末梢血単核細胞(PBMC)を採取した後、同種細胞株とinterleukin-2をを用いてex vivoでこのPBMCからキラー細胞を誘導した。キラー細胞を誘導している間に浅側頭動脈から逆行性に挿入して留置したカテーテルから低濃度化学療法行った。即ちPBMC採取後4あるいは5日目にシスプラチン(20mg/body)あるいはカルボプラチン(100mg/body)を投与し、続いて5日間5-FUを毎日250mg/body注入した。この低濃度化学療法終了の翌日からキラー細胞を3〜5日かけて動注した。これを1コースとして2コース行いCTスキャンにて効果判定後、引き続き40Gyの放射線療法を行った。再びCTスキャンにて治療効果を判定し、手術術式を決定した。15例が低濃度化学療法と養子免疫療法の併用療法にPR以上の効果を示し、40Gy照射後の判定では22例全でPR以上の効果がみられ、13例(55%)がclinical CRを示した。この13例の内11例は組織学的にもCRが確認され、形態的、機能的犠牲は最小ですみ、現在までの経過観察では再発はみられない。histological PRであった2例ではさらに30Gyの術後照射を追加したが、再発した。40Gyの照射後にclinical PRを示した9例では1例に拡大上顎全摘、3例に上顎全摘5例にデンケル手術が行なわれ、7例に再発がみられた。Kaplan-Meier法による全体の5生率は約60%であった。キラー細胞による免疫療法を組み入れた集学治療により約半数において、機能的、形態的犠牲を最小限に抑えられた癌制御ができ、良好なQuality of lifeが得られた。しかし残りの半数では癌制御のためには拡大手術が必要と考えられた。
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