1.内耳性めまいに対する手術的療法として現在は内耳摘出術、前庭神経切断術が行われている。しかし前者では聴力が失われるし、後者では頭蓋窩を開放する脳神経外科的手術である。 本研究は中耳的に半規管の機能を廃絶させることが可能であるか、その際蝸牛にはどのような影響が現れるかについて知る目的で実験を行った。 2.モルモット(有色)を使用した。ネンブタール麻酔後に中耳胞を開放し、外側、後半規管に対してアルゴン・レーザーを照射した。1回の照射はプローブの先端において1.0〜1.5ワット、0.5秒でプローブを照射すべき骨面に1mm以内に接近させて照射を行った。照射回数は1〜数回で連続的に照射した。また前庭機能を知るためにモルモットの外耳道に氷水を注入し電気眼振記録を行った。 3.レーザー照射後、数週間後に電気眼振計により温度刺激検査の結果を記録した。その後、生体固定を行ってセロイジン包理による組織学的標本を作成し、レーザー照射の効果を検討した。 (1)温度刺激検査の結果、反応の存在する場合と消失している場合のあることが判明した。 (2)組織学的には照射部位の半規管は表面が焼灼され、管腔は線維性、あるいは骨性に閉塞し膜半規管は全く消失していることが判明した。半規管膨大部を直接照射しなくとも膨大部稜の感覚細胞は消失するもののあることが判明した。 (3)半規管に広範な変化がみられる場合でも蝸牛の形態学的変化は殆どみられなかった。
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