I.舌炎ラットにおける舌体部の舌乳頭の変化に関する検討 ラット舌体部の筋層内へのエンドトキシン注入により、舌炎を惹起し、舌体部を中心として、糸状乳頭および茸状乳頭の変化を検討した。 H-E染色による光顕レベルの観察で、糸状乳頭の数、長さ、粘膜下組織への炎症細胞浸潤の程度、粘膜上皮の肥厚の程度を検討した。エンドトキシン注入動物においては、糸状乳頭の長さおよび数が、有意に減少する結果が得られた。また粘膜組織の厚さも有意に増大し、浸潤細胞の増加も見られた。しかし味蕾の存在する茸状乳頭に関しては、その数や形態に、有意の変化は認められなかった。 現在、走査電顕により、糸状乳頭および茸状乳頭を含めた、舌表面の微細構造の変化を検討中である。 II.薬剤性味覚障害ラットの作製と、その舌乳頭の変化に関する検討。 薬剤性味覚障害は、味覚障害患者の原因として最も多いものであり、その病態に関する検討は重要である。現在までの実験で、ラットにテトラサイクリンを腹腔内投与することで、約30%の動物に味覚障害を惹起することに成功した。これらの動物の味覚は、休薬によりその多くが改善を示した。これらの動物の血清亜鉛値や、舌粘膜の組織中亜鉛量はかならずしも減少しておらず、薬剤の持つ亜鉛キレート作用のみで、この味覚障害を説明することは難しい。現在、舌体部表面の微細構造を走査電顕にて検討中である。また有郭乳頭および葉状乳頭に関して、光顕および透過電顕にて検討を予定している。 以上、I)II)の結果に関し、平成8年5月の日本耳鼻咽喉科学会にて発表を受領されている。
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