研究概要 |
前年度に作成したヒト不死化角膜上皮細胞を用いて以下の実験を行った. (1)角膜上皮細胞の分化を制御する蛋白として,皮膚表皮でよく研究されているトランスグルタミナーゼに着目した.本酵素mRNAの発現をRT-PCR法によって検討したところ,単層培養した不死化角膜上皮細胞に存在することが確認された.また,重層化した部分ではトランスグルタミナーゼの基質であるコ-ニフィンが陽性であった.これらの事実は,本細胞株が角膜上皮における角化機構の解析に有用であり,新しい疾患治療薬のスクリーニングにも応用できる可能性を示唆している.なお,数度試みた遺伝子ライブラリーの作成は不調に終わった. (2)代用角膜としてのヒト不死化角膜上皮細胞の可能性を検討する目的で,3次元培養による疑似角膜の作成を試みた.ヒト実質細胞を含むコラーゲンマトリックス上に不死化角膜上皮細胞を播種したところ,重層化した上皮細胞層が形成された.ヒトを用いた疑似角膜の作成は世界で初めての成果である.この疑似角膜が移植できるか否かは,今後,本年度に樹立することができたラットあるいはマウスの角膜上皮形成術モデルを用いて確認する予定である.なお,不死化ラット角膜上皮細胞についてはすでに樹立ずみである. (3)ヒト不死化角膜上皮細胞の臨床応用の第一歩として,各種点眼薬の細胞障害性を,乳酸脱水素酵素の遊離を指標として,試験管内で評価する方法を考案した.今回は特に,毒性が話題となっている抗緑内障薬に焦点を当て,ウノプロストンおよびチモロール点眼薬の細胞障害性を臨床成績に沿った形で確認した.
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