網膜変性の分子生物学的研究

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06454499
• 研究機関: 鹿児島大学
• 研究代表者: 大庭 紀雄 鹿児島大学, 医学部・眼科学, 教授 (50010070)
• 研究分担者: 中尾 久美子 鹿児島大学, 医学部・附属病院, 助手 (30217658) ; 鮫島 宗文 鹿児島大学, 医学部, 助手 (80041333) ; 鵜木 一彦 鹿児島大学, 医学部・附属病院, 講師 (60193926) ; 伊佐敷 靖 鹿児島大学, 医学部, 助教授 (70168160) ; 上原 文行 鹿児島大学, 医学部, 助教授 (30168653)
• キーワード: 網膜変性 / 分子生物学 / 遺伝子診断 / HTIV-I / Norrie病 / ミトコンドリア病

研究概要

網膜変性の診断・病態・病因を探る目的で、主として分子細胞学的および分子生物学的方法を用いて、いくつかの基礎的および臨床的知見をあげることができた.以下は、特記すべき研究成果である.
1.基礎的研究:
1)網膜変性の実験モデルとして光変性網膜をラットやマウスに作成した.このモデルを用いて、さまざまな成長因子が網膜変性を阻止する作用をもつことを明かにした.すなわち、1週にわたって自然光を持続照射すると網膜視細胞はほぼ選択的に変性脱落するのであるが、あらかじめ成長因子を硝子体に投与しておくと有意に変性が阻止される.特にレチノイン酸反応遺伝子産物であるミドカインは、マクロファージの誘導をほとんど伴うことなく視細胞を変性から守る効果のあることを明かにした.変性阻止効果は、形態のみならず網膜電図を視標として視覚機能の側面を調べた場合も確認することができた.
2)光変性網膜の成因に関連して、視細胞内節におけるリボゾーム粒子の超微形態変化を明かにした.
2.臨床的研究:
1)重度の網膜硝子体発生異常を中核症状とするNorrie病の疾病遺伝子について、患者から得た試料を調べて変異の実態を明かにした.従来の記載にない新しい変異として3種類の点変異が明かになった.すなわち、同じ疾病における遺伝子の異質生を確認した.この知見は、Norrie病の遺伝子診断のための重要な資料となる.
2)糖尿病におけるミトコンドリア遺伝子を検索したところ、家族性に発症して重度の網膜症を発生した硝子体試料からミトコンドリア遺伝子の塩基番号3243番に点変異のあることを発見した.この新しい知見は、今のところ1例のみに見い出したいるが、今後の研究を進める起爆になるであろう。

研究成果

• [文献書誌] 大庭 紀雄,伊佐敷 靖: "Norrie病に関する最近の知見" 日本眼科学会雑誌. 100. 101-110 (1996)
• [文献書誌] Unoki K,Ohba N,et al: "Rescue of photoneceptons from the damaging effects of constant light by nidkine,a retinoic acid-respoasive gene prodact" Invest Ophthalnol Vis Sci. 35. 4063-4068 (1994)
• [文献書誌] Masuda K,Watanabe I,Unoki K,Ohba N et al: "Fuactional rescue of photoreceptors from the damaging effects of conctant light by surviual promoting footors in the rat" Invest Ophthalmol Vis Sci. 36. 2142-2146 (1995)
• [文献書誌] Isashiki Y,Ohba N,et al: "Novel matation at the initiation codon in the Norrie direase gene" Hum Genet. 95. 105-108 (1995)
• [文献書誌] Isashiki Y,Ohba N,et al: "Matations in the Norrie disease gene:a new matation in a Japanese family" Br J Ophthalmol. 79. 703-704 (1995)
• [文献書誌] 大庭 紀雄: "眼科学大系 10A 遺伝性眼疾患の概説" 中山書店, 20 (1995)
• [文献書誌] 大庭 紀雄: "眼科診療に役立つ遺伝学" 文光堂, 200 (1995)