研究概要 |
正常なヒト角膜上皮細胞をエキシマレーザー手術時に採取し,-80℃にて凍結保存した。このようにして得られた約20眼分の正常なヒトin vivo角膜上皮を用いて,3'末端部分のcDNAライブラリーを作成し,そこから無作為に約1000クローンを抽出してシ-ケシングを行った。そのデータを相互に比較し,多臓器のデータと比較,さらにDNAデータベースマッチを行うことによって,角膜上皮に発現している遺伝子の種類と各々の遺伝子の相対的発現量を求めた(gene expression profileの作成)。その結果,染色体にコードされているクローンが1088個得られ,その遺伝子種類は774であった。このうち,既知遺伝子は445クローン(227種類),未知遺伝子は643クローン(546種類)であった。 他臓器との比較で,角膜に特異的に発現している遺伝子で未知遺伝子は,頻度10以上でも2個あり,それ以下の頻度ではかなりの数がみられた。これらの遺伝子は角膜上皮に特異的な機能や構造に関与している可能性が考えられた。 さらに既知の遺伝子をその機能と存在部位によって分類して,角膜上皮の遺伝子発現の特異性を検討した。その結果,リボゾームタンパクなどタンパク合成に関する遺伝子や細胞増殖に関与している核遺伝子,ケラチンなどの細胞骨格や細胞膜タンパク遺伝子の発現の多いのが角膜上皮の遺伝子発現の特徴であった。
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