研究概要 |
我々はヒト角膜上皮の_cDNAライブラリーを作成し,そのクローン約1000個をランダムにシークエンシングを行うことにより,ヒト角膜上皮の_mDNAの分子構成を決定した。その結果,発現頻度が10回以上はアポリポプロテインJ(アポJ),カルサイクリン,アルファエノラーゼ,ヒト脂肪_mRNAとひとつの未知遺伝子(G508025)であった。つぎに,最も発現頻度が高いアポJに着目して,粘膜上皮(上皮),表皮を標本として,アポJの_mRNAおよび蛋白の発現を検討した。その結果,アポJ_mRNAは角膜上皮,結膜上皮,膣上皮,食道上皮で発現していたが,表皮では発現を認めなかった。アポJ蛋白は上記の粘膜上皮すべての表層部位に局在していたが,表皮には局在を認めなかった。以上から,アポJは眼表面で産生され,上皮の表層部位に局在して,何らかの生理的機能を果たしている物質であることが示された。未知遺伝子GS08025の全長の_cDNAのクローニングを行った。その結果,ORFは498個のアミノ酸をコードしており,マウスとウサギの角膜上皮特異的なケラチンK12と高い相同性を示した。本遺伝子はヒトのK12であると考えられた。 なおin vivo結膜上皮の_cDNAライブラリー作成については血液・上皮下組織の混入によるアーチファクトの除去に関して検討中である。
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