研究概要 |
ヒト鎖肛12症例のHLA血清学的ダイビングを行ったところ抗原頻度では、カイ2乗検定で有意に鎖肛に多いものはなかったが、A24,Bw52,Bw60,DR1,2が高頻度に出現する傾向にあった。鎖肛ブタではA31,B44,DR1,2が陽性で、発症しなかった同胞ではA11,24,31,DR1,2が陽性であった。筑波大学での兄弟発症例ではA24,DR2がどちらにも存在した。患児以外に同胞はなく、父親からA24,CW3,BW62,DR2のハプロタイプを共通に受け継いでた。ブタでヘキスト社のヒト用HLA-ABC,DR用プレートを用いて血清学的タイピングを行ったが、何種類もの型の抗血清に反応したり、同じ型の抗血清に対しても反応性が異なるなど判定が難しかった。このためキット化されたDNAタイピングを施行中である。 鎖肛ブタの維持に関しては鎖肛を発症したオス・メスの親ブタを飼育維持しつつ、親鎖肛ブタの交配によりほぼ100%鎖肛を発症させる家系が出現している。これに伴い新しい家系図を作成中である。また犠牲死させたものや死産例では脾臓や、白血球を凍結保存中である。 兄弟発症のヒト鎖肛では患児に共通なHLAハプロタイプが存在した。これまでの例の報告についてもそのほとんどに共通なハプロタイプ認めることによりヒトではMHC域の近傍に疾患遺伝子が存在することが強く推定された。 1994年にブタのmicrosatellite linkage mapが発表され、ブタにおいても遺伝子レベルでの疾患遺伝子の解析が急速に進展している。MHC近傍のマーカーはTNFBなどのマイクロサテライト多型が報告されており、ブタマイクロサテライトプロープを用いて疾患の推定遺伝子座位を決定するのに有用なものとなった。これらにつて現在検討中である。
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