研究概要 |
我々はこれまで,主として形態学的な面から,実験病理学的に,辺縁性歯周炎の際に生じる歯槽骨吸収や歯根膜線維破壊など歯周組織の破壊機序の解明を試みてきた。本研究の一環として今回、内毒素(LPS)による歯根膜線維芽細胞のコラーゲン原線維貪食能亢進作用を、ラット歯根膜由来培養線維芽細胞株を用いたin vitro実験系にて検討することを試みた。まず、顎骨より抜去したラット臼歯歯根膜部より継代可能な歯根膜由来培養細胞株の樹立方法の確立を試みた。その結果初めに3種類今年度10種類の歯根膜由来培養細胞株を樹立した。これらの細胞は短紡錘形ないし多角形をし、その多くがアルカリホスファターゼ反応陽性や、石灰化能など歯根膜線維芽細胞に特徴的な性状を示した。これらの培養細胞をコラーゲンゲル中で立体培養する事によりコラーゲン原線維貪食作用を検討した。しかしながら、本方法では培養線維芽細胞よるコラーゲン線維の取り込みが当初の予測ほど著明ではなく再検討を必要とした。新たに樹立した株細胞を用い培養条件や取込ませ方法の改良などさらに検討したが、未だ満足のいく結果は得られていず現在も検討中である。一方、LPSによる歯根膜線維芽細胞のコラーゲン原線維貪食能亢進作用には歯槽骨吸収と同様マクロファージ系細胞の関与が推察されるところから、上記実験に加え、ラット臼歯歯肉溝よりのLPS局所投与による辺縁歯周組織におけるマクロファージ系細胞の動態を、免疫組織化学的手法により経時的に検索することを試みた。その結果、EDI陽性を示す単球マクロファージ及びIa抗原陽性を示す樹状細胞が、LPS投与後3時間後から増加し7日後でも対照群に比べ優位に増加していることが示された。このことから、LPS投与によるマクロファージの局所への集積とサイトカインの分泌が示唆された。今後、マクロファージ産生サイトカインと歯根膜線維破壊との関係についても検討を続けたい。
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