研究概要 |
歯周組織での生体防御には単球、マクロファージ、白血球など一次性の炎症細胞とそれに引き続く特異的な免疫系の細胞が関わっている。その機能の発揮にはこれら細胞の生存と活性化が必要である。逆に、その生存が長くなると過剰な反応を引き起こすことになる。したがって細胞の生死の制御は歯周炎では重要な因子となる。この制御された細胞の死はアポトーシスである。本研究では未熟T細胞として胸腺細胞、成熟T細胞として脾臓T細胞を試料としてアポトーシスの機構を明らかにすることと単球、マクロファージの活性化因子(歯周病病原菌のLPS、TNF、substance-Pなど)のアポトーシスの制御をU937,p388D1細胞を試料として解析することを目的とした。その結果1)胸腺細胞では細胞の生存に関わるリン酸化とアポトーシスを進行するリン酸化反応がありPKCの異なったアイソフォームが関わっていることが明らかにされてきた(発表論文参照)。また新知見としてプロテオソームが関わっていることとヒストンの脱ユビキチン化が明かにされ、今後その制御機構の解明が必要であると考える。2)分化したT細胞のアポトーシスにはタンパク質の合成に依存した経路とタンパク質合成阻害により誘発される二つの経路が存在し、IL-2活性化によりCaイオノフォアに感受性になることが明らかになった(論文作成中)。また活性化をうけたT細胞は増殖因子IL-2の除去でアポトーシスが誘発され、その際には核内のタンパクのチロシンリン酸化の低下が伴うことが明らかになった(発表論文参照)。よりこれらの詳細な解明が必要であろう。3)単球マクロファージでは増殖因子(血清)の除去によりアポトーシスが誘発される。LPSやサイトカインTNFは血清除去によるアポトーシスを抑制する。神経性炎症に関わるsubstance-Pはアポトーシスを抑制する。これらのアポトーシスには特定のチロシンリン酸化タンパクの脱リン酸化が起き、LPS、substance-Pはそれを抑制する(Proc. Int. Conf. Dentin/Pulp Complex,1995)ことが明らかにされた。これらの事実は、単球、マクロファージは活性化因子によりアポトーシスが抑制され、機能を増強することを示唆している。今後、過剰な反応を抑制する生理的因子とそれによるアポトーシスの促進の細胞内分子機構の詳細な解明が必要であろう。
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