研究概要 |
口腔関連諸組織(血管、咬筋)機能に対するフリーラジカル相互反応系について統合的に研究した。また,循環系調節と平滑筋細胞内情報伝達系に焦点を絞り,フリーラジカルによる動的影響を考察した。 1.循環系調節-フリーラジカル連関 (1)歯髄血流量:イヌ犬歯頬側に薬物適用のための窩洞を形成,ここにスーパーオキサイドラジカル(xanthinexanthine oxidase),ハイドロキシルラジカル(フェントン反応)を反応させると,AChによる内皮依存性血流量増加作用が消失した。しかし,nitroglicerinによる血流増加には影響を及ぼさなかった。これらの結果から,歯髄循環系は内皮依存性緊張によっ調節されていると結論づけた(Arch.OralBiol.,1994)。 (2)イヌ摘出舌動脈の神経性調節:自律神経支配以外にCGRPが拡張性伝達物質として存在するこが明らかとなった(Japan.J.Pharmacol.,1995)。また,CGRPでメディエ-トされる反応は,ハイドロキシルラジカルによって抑制を受けるが、この作用は,CGRPのシナプス前局在を減少させることと,シナプス後膜でのATP依存性Kチャネルの開口抑制に基づいている可能性が示唆された。 2.血管平滑筋細胞内情報伝達-フリーラジカル連関 ウサギ脱膜腸間膜動脈標本を用い,スーパーオキサイドラジカルの細胞内情報伝達系(細胞内Ca動員)に対する影響を検討した。この結果,スーパーオキサイドラジカルはcaffeine感受性CaチャネルからのCa放出を抑制したが,イノシトール三燐酸感受性チャネルに影響を与えなかった。したがって,フリーラジカルに特異的作用があると結論した。 3.咬筋小胞体Caハンドリング 本研究シリーズでは,最も反応性の高いハイドロキシルラジカルが咬筋興奮-収縮連関コンポーネントである小胞体機能に及ぶす効果を解析した。この結果,ハイドロキシルラジカルによる小胞体Caポンプの酸化的障害は,Ca-ATPase蛋白の活性中心であるSH基の内部構造変化により惹き起こされることが明確となった(Japan.J.Pharmacol.,1995)。
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