研究概要 |
1.咬筋収縮-弛緩サイクルと活性酸素フリーラジカル (1)活性酸素種と咬筋小胞体(SR)機能:スーパーオキサイドおよび過酸化水素(H_2O_2)はSR機能(Ca^<2+>ハンドリング能)にさほど影響を与えないが,ヒドロキシルラジカルと一重項酸素に強いSR障害能が認められた(Jpn. J. Pharmacol. 67:21-28, 1995; J. Pharmacol. Exp. Ther. 277:1-9, 1996)。咬筋SRと大腿筋SRでは,咬筋SRに著明な障害が認められた。 (2)SRCa^<2+>放出チャネルと活性酸素フリーラジカル:SRのCa^<2+>放出チャネルを脂質二重層膜に再構成し,単一チャネル電流を測定した。H_2O_2とヒドロキシルラジカルはCa^<2+>放出を強力に促進する活性酸素種であったが,長時間の記録は不可能であった(膜の破壊を引き起こす)。一方,スーパーオキサイドは,SRの内因性カルモジュリン活性を低下させることによって選択的(カルモジュリン依存性)にCa^<2+>放出を増加させることが確認できた。このスーパーオキサイドの作用において,Ca^<2+>チャネルアゴニストcyclic ADP-riboseの生成促進が律速段階であることが明確となった(Nature, submitted, 1996)。 2.舌動脈緊張性と活性酸素フリーラジカル フリーラジカルは,舌動脈の緊張性の一部を構成する非アドレナリン・非コリン作動性(NANC)神経系に作用することを初めて明らかにした(Jpn. J. Pharmacol. 67:329-339,1995)。この作用は,シナプス前作用にもとづくものであり,とくにNANC線維のカルシトニン遺伝子関連ペプチドの破壊あるいは合成を阻止した結果であることを確認している。 3.LPSと活性酸素フリーラジカル LPS自身,活性酸素フリーラジカル発生源であることを示唆して以来,LPSの血管平滑筋緊張を減弱させる作用メカニズムについて追究してきた。この作用は血管収縮性神経伝達を抑制することによって引き出されるが(Br. J. Pharmacol. 107:826-832,1992),これに加えて,平滑筋でのNOS誘導による一酸化窒素(NO)の合成を促進した結果であることを証明した。また,NOをESRで捕捉できた。
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