Epstein-Barrウイルス(EBV)との関連が示唆されているシェ-グレン症候群(SS)では偽リンパ腫や悪性リンパ腫が発症することや、その成立にbcl-2の関与が報告されているが、その機序は明らかでない。近年、apoptosisの回避機構の一つにEBVの構造遺伝子であるlatent membrane protein(LMP)発現を介したbcl-2の発現亢進の関与が示唆されていることから、今回我々はSCIDマウスを用い、SS患者末梢血から樹立したB細胞株(SS-BCL)を移入することによりSSにみられるリンパ増殖性病変の再現を試み、その成立機序の解析を試みた。SS-BCL、ならびに対照として臍帯血リンパ球にEBVを感染することにより得られたLCL、およびEBV陽性のバ-キットリンパ腫由来のB細胞株Rajiを用い、これらの細胞株をSCIDマウスに移入した。SCIDに生じた腫瘍組織から樹立した各細胞株との比較検討を行った。現在までの予備的検討では、1%FCS存在下での培養条件におけるapoptosis抵抗性と細胞生存率は移入後のSS-BCL、LCLで高い傾向が示された。Bcl-2発現はSS-BCLのみに顕著に認められ、移入後のSS-BCLではその発現は1.6倍の亢進を示したことから、SS-BCLではbcl-2を介したapoptosis回避機構が示唆された。bcl-2の発現誘導に関与しているLMP-1の発現はSS-BCL、LCL、Raji共に全ての細胞株で移入前、移入後共に同程度の発現を示したが、LMP-1構造遺伝子の168664〜168924領域は、移入後のSS-BCLにのみ検出された。このことから特定のLMP-1遺伝子を介したbcl-2発現が想定され、SCIDにおける腫瘍状病変の成立にEBV感染B細胞の選択的なapoptosis回避機構の関与が考えられた。
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