研究概要 |
本研究(I)では、歯周炎患者の歯肉溝滲出液(GCF)中および末梢血(PB)の多形核白血球(PMN)のIgGを介した貪食能とFcγレセプターIII,II(FcγRIII,FcγRII)の発現をフローサイトメーターにて解析し、更に、両レセプターのmRNAレベルでの発現をRT-PCR法にて解析し、膜表面発現への関与を総合的に検討した。GCF-PMNにおけるIgGを介した貪食能およびFcγRIII,FcγRII発現強度は、PB-PMNに比べて有意に減少していることが明かとなった。また、GCF-PMNの貪食能の低下にFcγRIII,II分子の発現低下が関与していた。さらに、GCF-PMNのFcγRIIImRNAの発現がPB-PMNに比べ有意な減少を示したことより、FcγRIII分子の発現低下には、PMNがGCF中に滲出してくる過程で細胞膜表面からレセプターが遊離され、mRNAの発現レベルでの減少も関与することが示唆された。 本研究(II)では、GCF中のPMN補体レセプター(CR1,CR3)の転写レベルについて末梢血のものと比較しながらRT-PCRおよびin situ hybridization法にて解析した。全例においてCR1,CR3ともに、GCF-PMNはPB-PMNよりも有意に低いmRNAレベルを示した。in situ hybridizationにおいては、CR1,CR3ともにアンチセンスプローブと反応されたPB-PMNは大部分が陽性のシグナルを示したのに対して、GCF-PMNでは陽性のシグナルが少数の細胞に限られていた。以上より、GCF-PMNのCR1,CR3 mRNAレベルはPBに比較して有意に低下していることが明らかになった。したがって、GCF-PMNの細胞表面に増加している補体レセプターは、あらかじめタンパク質として貯蔵された補体レセプターが細胞表面に輸送されるのみであることが示唆された。
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