研究概要 |
歯周組織再生治療の目標は,歯根膜を介した線維性新付着の獲得と歯槽骨やセメント質という硬組織の再生にある。そこで,本研究では,歯周組織再生のための歯根膜線維芽細胞の硬組織形成の制御の面から調べることを目的とした。すなわち、申請者らは,歯根膜線維芽細胞による歯周組織再生の機序を,“歯根膜線維芽細胞の再生局所への遊走・増殖,そして分化機能,特に硬組織形成能発現"という一連の流れに着目し,線維芽細胞成長因子による増殖と遊走の制御および活性型ビタミンD3による硬組織形成能の制御機構について調べた。 1)ヒト歯根膜線維芽細胞の線維芽細胞成長因子(FGF)に対する走化活性に関する研究 歯根膜線維芽細胞のDNA合成は,acidic FGFおよびbasic FGFによって濃度依存的に促進されるが,KGFには影響を受けない。一方,歯根膜線維芽細胞の走化活性は,3種類いずれのFGFによっても濃度依存的に促進された。また,acidic FGF,basic FGF,およびKGFいずれについても,走化活性を示したのは,G1期あるいはG2期にある細胞であった。これらの結果は,FGFの歯根膜線維芽細胞におよぼす遊走と増殖に対する作用が,互いに独立していることを示唆している。 2)ヒト歯根膜線維芽細胞における硬組織形成能と活性型ビタミンD3レセプター発現に関する研究 活性型ビタミンD3は歯根膜線維芽細胞のオステオカルシンmRNAを発現を亢進した。そのオステオカルシンmRNAの発現は活性型ビタミンD3レセプター発現によって制御されていると考えられる。したがって,オステオカルシンの産生は活性型ビタミンD3レセプター発現によって制御されていると考えられる。このように,歯根膜線維芽細胞は密度が高くなると自ら液性因子を産生し,活性型ビタミンD3レセプターmRNAの発現の制御を介して硬組織形成能を制御している可能性がある。
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