研究概要 |
歯と歯肉組織を一塊として採取することにより可及的に歯周ポケットを再現した試料に対して、本研究で調製した15種類のプラーク細菌に対する特異抗体をプローブとした酸素抗体法により、ヒトの歯周ポケット底部で活動する細菌種を検索した。その結果、Porphyromonas gingivalis,Campylobacter rectus,Fusobacterium nucleatum,Eikenella corrodens,Prevotella intermedia,Actinobacillus actinomycetemcomitans,Treponema denticolaが、試料によりその検出の有無は異なるものの、ヒトのポケット底部で観察された。しかし、ポケット底部でのみ存在する菌種は、本研究で用いたプローブの範囲内では観察されず、例えばP.gingivalisはポケット全域で検出された。また他の菌種は、主としてポケット中央部から底部にかけて検出された。 走査型電子顕微鏡による観察では、ポケット底部でスピロヘータが多数観察され、その大きさや形態から複数の菌種の存在が示唆された。歯周ポケット内の歯肉縁下プラークと歯肉結合組織細胞とが接する境界は、細菌数が激減していることから、プラークフリーゾーンと呼ばれている。このプラークフリーゾーンでは、菌数が少ないものの、長・短桿菌と大小様々なスピロヘータが散在性に小集落を形成しているのが観察された。これらの細菌は、菌体が直接歯根面に接触している場合と、菌体表層をglycocalyx様の網状構造物に被覆されその構造物を介して根面に付着している場合がみられた。 一方、歯肉結合組織細胞の破壊機序を、組織学的に検索するとともに、nick end labeling法、アポトーシス関連抗体、DNA蛍光プローブを用いて検索した。その結果、歯周炎の進行過程において歯肉細胞および炎症浸潤細胞にアポトーシスが誘導されている可能性が示唆された。
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