研究概要 |
歯周炎は歯周病原性細菌の感染による炎症性疾患とされているが,生体側の免疫反応によってもその病態は影響を受けると考えられている。我々はEscherichia coli (E.coli)由来内毒素をマウス菌肉に頻回投与し,初期に起こる歯槽骨吸収にはT細胞の存在が重要であることを明らかにした。そこで本研究でT細胞から産生されるサイトカインmRNAをin situ hybridization (ISH)法を用いて検討した。 実験動物は8週齢の雄性BALB/cマウスを使用した。まずマウスの下顎左側第一臼歯の近心部歯肉にE.coli 0111 : B4 (Difco)由来の内毒素を,48時間ごとに1,4,7,10回投与し,最終投与24時間後に下顎を摘出した。これを4%パラホルムアルデヒド/PBSで固定し,EDTA脱灰後,通法に従いパラフィン包理,連続切片を作製した。プローブの作製はマウスIL-4,IFN-γ,IL-1βのsense (s)およびantisense (as) oligo-DNA (36mer〜45mer)を合成し,Dig-11-dUTPにて3′末端を標識した。切片は脱パラフィン後,3%H_2O_2/メタノール処理により内因性のHRP活性を阻害し、0.2N HC1処理ならびにプロテイナーゼK処理(5μg/ml,37℃,10分間)を行った。hybridizationは,0.5μg/ml〜2.0μg/mlのプローブ存在下,37℃で一晩行い,最終的にHRP標識Dig抗体を用いて,陽性細胞を染色した。陰性対照として,s-プローブの使用,競合阻害,過剰にstringentな条件での洗浄,RNase処理などを行った。陽性対照に28S rRNAの染色を行ったところ,IFN-γmRNAおよびIL-1βmRNA陽性細胞の出現が実験早期から顕著であったのに対し,IL-4mRNAの陽性細胞の出現頻度は低かった。本研究では,比較的早期からIL-1βmRNAの発現が高頻度に観察され,IL-1βが炎症の拡大や骨吸収に関与していることが強く示唆された。また,IFN-γ,IL-4mRNAの発現に相違が認められたことから,骨吸収が進行している時期にはIFN-γの関与が大きく,さらにはIF-1βmRNA発現の促進も行っている可能性が推測された。
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