根尖性歯周炎病巣内の炎症性サイトカインの産生状況を把握することを目的として、病巣内にみられる浸潤細胞を免疫組織学的に検索し、次いで、サイトカインの遺伝子発現をreverse transcriptase polymerase chain reaction法を用いてmessenger RNAレベルで検討し、下記の結論を得た。また、根管治療の過程で随時得られることの多い根管滲出液についても同様に研究し、臨床を考慮した病態診断のマーカーになるかについて検討を加えた。 1.歯根肉芽腫と診断された根尖病巣12例を免疫組織学的に検索した結果、その浸潤細胞の大部分はCD3陽性Tリンパ球であり、さらにTリンパ球のCD4とCD8の陽性細胞数を比較すると大半がCD4陽性細胞であった。 2.RT-PCR法を用いて病巣部の炎症性サイトカインの発現を検討した結果、全症例にIL-IβとTNFのサイトカイン遺伝子の発現が認められた。 RT-PCR法による根管滲出液細胞成分のサイトカイン遺伝子の発現を調べたところ、IL-1α、βおよびTNFの遺伝子はそれぞれ種々の程度でその発現を認めた。なお、これらの成績と臨床パラメーターとの有意差検定を行った結果、IL-1β遺伝子の発現が慢性型の症例に比べて急性型の症例で有意に強い発現を示し、急性型の症例でβはαに比較して強い発現を示した。
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