昨年度に引き続き、3次元コンピュータグラフィックスを応用した教材(以下、3次元CG教材)を作製した。今年度は、上顎右側第一大臼歯の近心2級メタルインレー窩洞の窩縁斜面(ベベル)を付与する前の窩洞、ベベルを付与した後の窩洞およびワックスアップを行い、咬合面のカービングを行った状態の3次元モデルを構築した。さらに、それらのモデルを3次元プレゼンテーションソフトウェアに転送することによって、学習者のマウス操作によって自由自在に歯が回転し、比較的容易に、様々な角度から窩洞を観察できるような教材を作製した。 この教材を用いて、ベベルの付与を課題とした実習において、学生に「自己評価」を行わせ、その有用性を検討したところ、3次元CG教材は、学習者の視覚に直接訴えかけ、おおむね解りやすいとの感想を得た。しかし、ベベルの角度などの詳細な点を完全には表現できないこと、配色によって学習者の受け取り方が多様に変化すること、などの欠点も明らかになった。 さらに、現場である基礎(模型)実習の場に3次元CG教材を持ち込み、試験的に指導に活用した。その結果学習者はおおむね解りやすいとの感想を持ったが、教材の操作が難しいこと、色の設定が困難なこと、学習者によっては黒板などによる指導のほうが解りやすいと考える場合もある、などの知見を得た。 今後、知識の学習にも役立つようなコンピュータ教材ならではの対話性を持つこと、多くの学習者にとって容易なインターフェースを備えること、などの機能を追加した上で、学習効果が高く、指導者の負担を軽減する教材のありかたについて検討を加えたい。
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