部分床義歯がその機能を最大限に発揮するためには、動揺は小さいほうが有利であるが、動揺を小さくしようとするがために、支台歯に過重負担を強いては本末転倒ということになる。ここに、残存歯を傷めない範囲での義歯の動揺の抑制が求められるゆえんである。本年度における研究目的は、支台装置、特に根面アタッチメントにより、支台歯に伝えられる荷重はどの様に変化するかについて解析を行った。先ず、前年度作成した資料を参考として、周囲の歯槽骨、歯根膜、歯肉を含めた下顎犬歯の残根モデルを作成した。次に、支台装置としてハイコレックススーパーJ4015、OPアンカー、ボナ604A、バテスティーアタッチメントの4種を選択し、さらに、この上に人工歯を含むレジン床を設置し、これらの形態を座標上に取り込んだ。解析に使用したコンピューターソフトは汎用非線形構造解析システムFINASで、図形の取り込み、および、メッシュの切断はFEMAPを使用した。計算に用いた物性定数や実験条件については、前年度の報告で応力が集中する実験結果と症例のX線写真上での歯槽骨吸収部位が類似したという事例の検証に基づき、前年度用いた条件をそのまま使用した。荷重方向は下顎犬歯ということを考慮して、唇側から舌側方向へ2〜5kgfとした。結果の概要は以下のごとくである。 1.支台歯周囲に認められる応力の大きさ、分布範囲は支台装置によって異なった。原因としては材質、着力点の位置、維持発現機構の違いなどが原因として考えられる。 2.ハイコレックススーパーJ4015の支台歯に及ぼす応力分布は他に3種の根面アタッチメントとは全く異なる様相を呈した。これはハイコレックスが維持力として磁力を応力しているからであり、詳細なる検討については磁性アタッチメントの磁場解析が必要である。
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