研究概要 |
I.基礎的研究 1.雌ビ-グル犬6匹(骨粗鬆症2匹,老齢犬2匹,若年犬2匹)の下顎骨,大腿骨,脛骨に,骨結合型チタンインプラント(ブロ-ネマルクシステム)を総計で132本埋入した.術後1週から術後1年3ヵ月にいたる観察期間において,埋入したインプラントはすべて周囲骨組織と強固は結合をしていた. 2.チタンインプラントが骨結合を得る機序において,試験群では埋入後早期に新生する骨組織の骨化機転が対照群よりも緩徐であり,骨治癒にともなって獲得される骨結合力も弱いことが明らかとなった. 3.チタンインプラントの骨結合と生着に関連する内的因子として、インプラント周囲の皮質骨が強く影響することが分かった. 4.強固な骨結合を獲得し咬合機能を営むインプラントに対して,長期的に加重負荷(早期接触)を与えても骨結合は失われなかった. II.臨床的研究 1.骨結合型チタンインプラント(ブロ-ネマルクシステム)を骨粗鬆症患者 15人に74本,比較対照患者31人に139本の,総計で213本埋入して,212本に骨結合が得られた. 2.脱落した1本は骨粗鬆症の下顎例に生じ、初期固定の不良と骨治癒期間の不足が原因と考えられた. 3.顎骨の骨粗鬆症状態の術前診断にはCT scanが有効で,骨組織(骨生検)の病理組織像とよく一致していた. III.結論ならびに将来的展望 1.骨結合チタンインプラントは骨粗鬆症に対しても,適応可能と思われる. しかしながら基礎的研究から明らかにされたように,骨粗鬆症で獲得される骨結合力は健常群よりも弱いことから,骨結合型チタンインプラントを骨粗鬆症に適用するに際しては,慎重に行う必要がある. 2.現在,骨粗鬆症にインプラントを適用することを目的とした術前診断と治療法(埋入手術・補綴処置)を確立しようとしている. 3.また,骨結合インプラント周囲に誘導される新生骨を応用した骨格増強法について,検討中である.
|