研究概要 |
1.咬合相の自動認識と咬合相筋活動量の定量化 (1)咬合相における筋活動量の測定 教室で開発した筋電図・下顎運動測定分析システムにより、筋活動量と下顎運動の同時測定から、タッピング運動時の咬合相筋活動量の定量化を試みた。被験者は全部床義歯患者3名(男性2名,女性1名)で咬合相の認識は位置閾値(垂直運動成分の最小値から2mm)を設定する方法を用いた。その結果、本システムにより開口相,閉口相,咬合相に対応した筋活動量の定量化が可能になり、タッピング運動時の咬合相筋活動量の比率は総筋活動量の約70〜80%であることが明らかとなった。この比率は同一被験者内においてもストローク毎に変動が少なく、被験者間においても少ない傾向を示した。 (2)タッピング運動時の咬合相筋活動量による咬合力の算出 高齢全部床義歯患者9名(男性5名,女性4名)を被験者として筋電図と咬合力,下顎運動を同時測定し、タッピング運動時の咬合相筋活動量から咬合力の算出を試みた。測定3回分のデータから,咬合相筋活動量と咬合力の関係を表わす散布図を求め,回帰曲線を適合させた。測定4回目の咬合相筋活動量を得られた関係式に代入して推定咬合力値を算出し,測定4回目に実測した咬合力値との誤差を求め比較した。その結果,実測値に対する誤差はほとんどの被験者で2Kgf以下、咬合力の上限に対する平均誤差は12.2%となり,同一被験者内で咬合力の変化を比較する際には十分な精度を有していると思われた。 2.三次元咬合力測定装置の試作と有歯顎者の測定 義歯に加わる咬合力の作用方向を知る目的で三次元咬合力測定装置を試作した。現在,咬合力測定プログラムの製作中であり、今後、装置の較正実験ならびに健常有歯顎者を対象として筋電図との同時測定を行い、咬合力の大きさ,作用方向と筋電図積分値との関係について検討する。
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