研究概要 |
平成6年度はタッピング運動時の咬合力を積分筋電図から算出するために,下顎運動測定装置(Mandibular Kinesiograph K6-1)を用いて、開閉口運動における咬合相を認識して,表面筋電図と同時記録することにより咬合相筋活動量を定量化することを試みた.咬合相の認識は位置閾値から設定することとし,下顎運動の垂直成分の最小値から下方2mmとした.咬合力,筋電図,下顎運動を同時記録して,分析するシステムを顎機能解析システムとして,高齢全部床義歯患者を対象に義歯機能の評価を行った. 1.全部床義歯患者に,ロードセルを取り付けた複製義歯を装着して,1秒間に1回の割り合いで,タッピング運動を行わせたところ,咬合相筋活動量の比率は総筋活動量の約70〜80%であることが認められた.この比率は被験者間においても差が少ない傾向を示した. 2.咬合相における筋電図積分値と咬合力の実測値の関係を散布図として表わし,最もよく適合する回帰曲線として,パワー曲線と二次曲線を選択した.使用中の全部床義歯を装着してタッピング運動を行わせ,筋電図と下顎運動の記録から咬合相における筋電図積分値を,それぞれの回帰式に代入して,咬合力を算出した.その結果,実測値と10%前後の誤差で,時系列上で動的咬合力を推定することができた. 平成7年度は,三次元咬合力測定装置の開発に取り組み,超小型ロードセル3個を組み込んだ咬合力計を試作した. 1.開発した三次元咬合力測定装置の較正実験を行ない,較正係数を設定した.較正係数により本装置の出力誤差は5%以内であった. 2.本装置を高齢全部床義歯患者の複製義歯に取り付け,5秒間に2回の咬みしめにより咬合力を測定したところ,三次元的な作用方向と大きさが記録できた.三次元咬合力と左右側咬筋,側頭筋の表面筋電図を同時記録して,咬合力の作用方向,大きさと咀嚼筋のコーディネーションおよび筋活動量を観察し,現在,三次元咬合力と筋電図積分値の関係を検討中である.
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