研究概要 |
これまでに白板症および白板症より癌化した症例を用い,免疫組織化学的にLewis^Y(Le^y)抗原,TGF-α,P53およびbcl-2遺伝子産物の発現について検討し,それらの発現と異形成の程度との関係,および癌化前後の発現の変化を検索して以下のような結果を得た。 1.白板症症例35例については,異形成の程度(Banoczyの分類による)が増すにつれ、TGF-αおよびP53遺伝子産物の発現が増加する傾向がみられた。それに対して,Le^y抗原およびbcl-2遺伝子産物の発現は減少する傾向が認められた。 2.白板症より癌化した症例(10症例)においては,TGF-αは癌化後に有意にその発現の増強が認められ、逆にLe^y抗原の発現は自意に減少していた。とくに,Le^y抗原は,癌化後では癌負珠やその周辺の角仕のよい部位にのみその発現が認められた。また,P53遺伝子産物の発現は癌化後に増加し,逆にbcl-2遺伝子産物の発現は,減少していた。 以上の結果から,白板症などの前癌病変の癌化の過程にアポトーシスの抑制あるいはその制御機構からの逸脱が関与している可能性が示唆されたので,現在TUNEL法によるアポトーシスのin situでの検討,新鮮標本を用いてDNAの断片化の証明を行っている。
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