1.予備実験において、一定実験条件下に不動化し頭部を固定したラット10匹に対し1%メピバカイン0.1mlを用いて星状神経節ブロック(SGB)を行い、上口唇部に相当する皮膚のSGB前後の相対的血流量の変化をレーザードップラー血流計を用いて観察した結果、ブロック10分後の130%増加をピークに著しく上昇した。また同部表面温度の上昇を経皮的表面温度測定器とサーモグラフィーを使用して確認した。 2.神経損傷モデルラットの作製、群分けおよび毎日1回計30回のSGBは終了した。この際SGB奏効の判定は、ブロック後1〜2分セボフルランからの覚醒直後より明らかに現れる眼裂の狭小を確認しその基準とした。またこれに伴い嗄声やブロック側の上腕神経麻痺がときに観察された。 3.SGB施行グループでは1ヵ月経過群より体性感覚誘発電位(SEP)の回復がみられたのに対し、SGB非施行グループでは2ヶ月経過群から観察された。またSGB施行グループは8ヶ月経過群においてほぼ100%の回復率が得られたのに対し、SGB非施行グループの回復率は平均約70%であった。グループ間の回復率を比較すると3ヵ月経過群以外全ての経過群において有意差が認められた。以上より、現時点ではSGBはラット損傷神経においてSEP振幅の回復に対しその有効性は認められる。 なお研究遂行時に得られた情報として、SGBを行うに際し臨床においてヒトでは正面よりアプローチするが、ラットにおいては背面より行う方が確実性が高いことが判明した。 現在、SGB施行・非施行の両グループ共に1〜8ヶ月経過群までのSEP測定とエポキシ樹脂包埋まで終了しており、今後はさらに損傷神経の形態学的な回復過程の変化に留意し研究観察して行く予定である。
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