星状神経節ブロックは、三叉神経麻痺の治療法の一つとして臨床的有用性が報告されている。しかし治療効果判定の基準がなく治療法の有効性を確認することが困難である。そこで星状神経節ブロックの有効性を客観的に評価する目的でラット眼窩下神経を人為的に切断し、ラット頸部交感神経節ブロック(以下Rat-SGB)を施行したものと、しないものについて神経切断後の回復の相違を調べた。回復の程度については、体性感覚誘発電位(以下SEP)を用いて神経生理学的評価を行い、さらに組織学的評価を光顕および電顕観察によって行った。 実験には左側の眼窩下神経を切断した雄性ウィスター系ラット108匹を用いた。SGBを1回/日の頻度で30回施行した群(Rat-SGBグループ)と非施行群(Non Rat-SGBグループ)とに分けて実験を行った。 1 神経生理学的評価では、1ヶ月経過群においてRat-SGBグループはすでにSEP振幅の回復がみられたが、Non Rat-SGBグループでは認められず、また8ヶ月経過群での回復率の平均はRat-SGBグループでほぼ100%であったが、Non Rat-SGBグループでは約70%であった。 2 組織学的評価では、単位面積あたりの有髄神経線維数において、両グループ間に有意な差は認められなかった。しかし平均直径と直径分布においてRat-SGBグループの方が大きく、大径の有髄線維が早期から多数観察された。 Rat-SGB施行グループでは生理学的にも組織学的にも良好な回復傾向を示すことが認められた。このことから星状神経節ブロックの交感神経遮断効果によって切断神経の修復や再生が早めること示唆された。
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