昨年度はミダゾラムとフルマゼニルが自律神経活動に及ぼす影響の周波数解析を行った。本年度は皮膚血流・トノメトリ血圧変動についてパワースペクトルアレイを作成し、検討した。方法は昨年度実績報告書に記したものと同様である。本年は男子学生4名を対象とし各2回の実験を行った。M群ではミダゾラムを投与し、MF群ではさらにその18分後にフルマゼニルを投与した。トノメトリ血圧については、beat to beat血圧変動を自律神経パッケージを用いて分析した。また、脈圧変動(脈波)はデータレコーダーに記録後、GMVIEWにて100Hzでサンプリングした。その結果、昨年度の結果と同様に、RR間隔・トノメトリ血圧変動はミダゾラム投与後に低高周波数帯でパワー値が著明に低下し、フルマゼニル投与後に回復した。皮膚血流変動は、ミダゾラムにより主として低周波領域のパワー値が低下し、フルマゼニルにより回復した。皮膚血流変動とトノメトリ血圧変動のパワースペクトルアレイは基本的に同様であった。すなわち、ミダゾラムにより全周波数帯においてパルスウエーブとしてのパワー値が低下し、スペクトルピークが高周波帯へシフトした。フルマゼニル投与後にパワー値とシフトが一旦、ミダゾラム投与前の状態に戻ったが、再び軽度に低下とシフトが生じた。その後、パワー値の減少と高周波帯へのシフトは時間経過とともに投与前の状態へ回復した。また、ミダゾラムにより、基本モード+高調波の規則正しい波が明瞭になり、これは心拍のゆらぎが減少することを反映していると考えられた。また、この変化は自律神経失調状態の患者の変化に類似していた。スペクトルアレイから、ミダゾラムにより一種の自律神経失調状態が惹起されること、およびフルマゼニルはこれを一旦回復させるが、半減期がミダゾラムよりも短いために、再び同様な変化が生じることが示された。スペクトルアレイは今後、検討に値すると考えられた。
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