研究概要 |
生体親和性に富んでいるリン酸カルシウムの一つであるリン酸四カルシウム(4CP)を基材として,この粉末とオレイン酸あるいはユ-ジノールからなる試作根管充填用シーラー(CPOとCPE)を開発し,平成6年度には,その理工学的性質が根管充填用シーラーとして望ましいものであることを明らかにした。 これに引き続いて平成7年度は,イヌ歯牙の根管にCPOおよびCPEを用いることにより,これらの試作根管充填用シーラーの根尖周囲組織に対する反応を検討した.すなわち,イヌ歯牙の根管にCPO,CPEおよび酸化亜鉛ユ-ジノールシーラー(ZOE)を故意に過剰充填し,1,4,8、12週間経過した後に,根尖周囲組織の反応を組織学的に検討した.CPO周囲には新生硬組織が認められた.しかしながら,全実験期間を通じて,CPOと接触した根尖組織には軽度あるいは中等度の炎症が認められた.硬組織はCPEの周囲にも形成されたが,CPEは根尖周囲組織にCPOより重篤な炎症を引き起こした.これに反して,ZOEはその周囲に高度な炎症を引き起こした後に,線維性結合組織によって被包され,組織内に残存した.また,根尖外に漏出したCPO,CPEおよびZOEの生体組織による吸収を比較すると,CPOが比較的早期に吸収されるのに対して,CPEおよびZOEは長期にわたって組織内に残存する傾向が認めらた.これらの結果から,CPOは生体親和性根管充填用シーラーの基礎として応用できることが示唆された.
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