研究概要 |
これまでのタンパク質吸着実験は,粉体試料を用いた実験がほとんどであり,その実験方法も,粉体用計測装置がほとんどである.この研究では,まず,ある面を有する物質へのタンパク質の吸着およびタンパク質吸着後の表面性状を静電気学的および疎水学的にとらえようと試みた.試料として,リン酸カルシウムを表面に持つ平板の作成を試み,アパタイトの焼結体とアパタイトを結晶成長さした平板の2種類の試料作成に成功した.平面の静電気学的性状の把握は,・光散乱式電気泳動装置のセルに改良を加え,測定可能な状態にした.その結果,粉体のゼータ電位とほぼ同じ値が得られた.また,接触角の測定は,既存のODU式測定に加え,新しい原理に基づく接触角の測定方法を開発し,タンパク質吸着後の試料表面を水溶液中で測定できるようにした.それぞれについて,現在測定中である. また,理論的には,物質表面間に働く相互作用力を,歯垢形成を想定し,合成ハイドロキシアパタイ(HAp)とタンパク質間,HApと細菌間に働く,静電気力とvan der Waals力との総和を,表面エネルギーとして求めた.その結果,HAp表面にHamaker定数が小さく,HApの負の電位を大きくする物質を吸着させ,溶液のpHを高くすることができれば,HApと細菌との間に大きなポテンシャルエネルギーの障壁が生じ,それによって,細菌とくに負の電位の大きい細菌の付着を遠距離力で阻害できることがわかった.
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