研究概要 |
本研究では骨形成因子の受容体を単離するために,平成7年度にはまず受容体型セリン/スレオニンキナーゼをPCR法で増幅し,新規遺伝子を数種類同定した.そのうちのひとつmTFR11が骨形成因子受容体であることをリガンド結合アッセイおよびツメガエル初期胚を用いた機能解析によって確認した.同遺伝子を改変することによって,リガンド結合ドメインを欠損させた変異受容体はBMP-2およびBMP-4の機能を特異的に阻害することを確認した.平成8年度では骨形成因子(以下BMP)受容体のアミノ酸置換によるシグナル伝達能の改変,およびBMP受容体からのシグナル伝達に関わる細胞内因子の探索を行った.我々が単離した受容体はタイプI受容体に分類され,細胞膜貫通領域とセリン/スレオニンキナーゼ領域の間にGSボックスあるいはタイプIボックスと呼ばれるGly-Serの繰り返し構造をもつ.この構造はタイプII受容体によってリン酸化されることにより,シグナル伝達に必須の役割を担っているものと考えられている,したがって,この領域を改変することによりそのシグナル伝達能を変化させることが可能になる.実際に,Gln残基をASP残基に置換することにより,構成的にシグナルを伝達する活性型受容体として機能することが確認された.この受容体の利用により,シグナル伝達メカニズム解明への道が開かれるものと期待される.またBMP受容体に会合する分子の探索のため、酵母の2ハイブリッド法を用いてスクリーニングを行った.その結果,既知の遺伝子を袋3種類のcDNAを得た.現在それらが機能的にBMPシグナル伝達に寄与しているか否かについて検討中である. 一方,名古屋大学との共同研究によりTGF-βやBMPのシグナル伝達にかかわる新しい細胞内キナーゼTAKIを同定し,BMPシグナルとの関連についても解析中である.
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