脳虚血に伴うストレスに応答して、グリア細胞では様々な生理反応、すなわち、サイトカインの産生やそれに続く一酸化窒素合成酵素(NOS)の誘導などが引き起こされる。NOSにより生産されるNOはニューロンに作用し、長期抑圧や長期増強などとともにニューロン死に関与することが知られている。今回、グリア細胞におけるNOS誘導機構について検討し、以下の新知見を得た。ラット由来C6グリオーマ細胞において、エンドトキシン(LPS)、インターフェロン-γ(IFN-γ)はそれぞれ単独処理ではNOSを誘導しないものの、両者を同時処理すると著しい発現が起こった。この発現は特異的チロシンキナーゼ阻害薬のハービマイシンAによって抑制された。LPSは核内転写因子NF-kB(p50、p65のヘテロダイマー)の活性化と核内移行を惹起させた。一方、ハービマイシンAの前処理によってこの活性化は抑制された。また、IFN-γはJAK-2キナーゼの自己チロシンリン酸化、基質であるstat1αのチロシンリン酸化、およびstat1αの核内移行を亢進させたが、ハービマイシンAはこれらすべての活性化を抑制した。さらに、IFN-γはMAPキナーゼの活性化をも引き起こした。このことから、IFN-γはJAK-STAT系にのみ作用するばかりでなく、MAPキナーゼ系にも作用し、両者間のクロストークが存在している可能性が示唆された。以上のことから、C6細胞において、LPS/IFN-γの同時処理はNOSを誘導するが、これには核内転写因子NF-kBとstat1α、両者の活性化が必要であり、さらに、チロシンキナーゼが両者の活性化に関与していることがわかった。
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