サイクリン依存性キナーゼ(cdk)は哺乳類細胞の細胞周期進行の制御において重要な役割を果たしており、その活性はその分子自体の燐酸化により制御されている。このcdkを燐酸化して活性を負に制御する燐酸化酵素としてweelキナーゼ、miklキナーゼの存在が酵母の遺伝学的研究から報告されている。ヒトweelキナーゼをプローブにマウスのcDNAライブラリーから新規の燐酸化酵素のクローン単離を行った結果、新たにマウスweelを単離した。このORFはヒトのweelの1.5倍の長さがあり、C末側3分の2とヒトweelの全長は93%の相同性がみられた。一方N末側3分の1はマウスにのみ存在した。 この遺伝子産物をバキュロウイルス系で発現させたマウスweelキナーゼはCDKのひとつであるcdc2キナーゼのチロシン残基を燐酸化して、その活性を抑制することが明らかとなった。 また、マウスweelキナーゼはM期で燐酸化されることが明らかとなり、このうちの一部はcdc2キナーゼによることがわかった。cdc2キナーゼによる燐酸化はweelキナーゼを不活性化するにはいたらず、cdc2キナーゼおよびこれ以外の燐酸化酵素により燐酸化され不活性化することが示された。この燐酸化はN末領域において観察され、この部分には13個のSer/ProまたはThr/Proという配列があり、これらが燐酸化されている可能性が推察された。weelキナーゼのN末側の存在がその活性制御に重要であることが示唆された。
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