研究概要 |
申請者らは、がん細胞で観察される高いヘキソキナーゼ活性が、正常細胞ではほとんど発現していないII型と呼ばれるアイソザイムの転写亢進によってもたらされていることを見いだした.本研究では、細胞ががん化した際に、どのようにしてII型アイソザイムの活性が亢進されるようになるのか検討を行い、以下の知見を得た. 1.II型ヘキソキナーゼ遺伝子の解析 申請者らは、世界に先駆けて高等動物のヘキソキナーゼをコードする遺伝子の単離ならびに解析を行ってきた(J.Biol.Chem.268(1993)8422、生化学67(1995)137).本研究では、ヒトのII型ヘキソキナーゼの構造ならびに転写レベルの解析を進める一方(Cancer Lett.82(1994)27)、細胞のがん化に伴ってどのようにしてII型アイソザイムの転写レベルが亢進するのかを明らかにする目的で、本遺伝子のプロモーター領域の構造決定ならびに解析を行った(Biochim.Biophys.Acta,in press). 2.ミトコンドリアへの結合によるヘキソキナーゼの活性調節 がん細胞では、ヘキソキナーゼはミトコンドリアに結合し、酸化的リン酸化反応で合成されたATPを効率よく利用していると考えられている.ミトコンドリア膜上でのヘキソキナーゼ結合部位はポ-リンであるが、我々は、実際にATPを受け渡す窓口としては、内膜上のADP/ATP carrierであると考えており、ヘキソキナーゼへのATPの供給機構解明のためにはADP/ATP carrierの構造と機能に関する研究が重要であると考え、研究を進めている.本研究では、まず、本担体によるヌクレオチド輸送の分子機構を明らかにすべく、システイン残基の特異的修飾法を用いた構造と機能の解析を行い、基質の認識と輸送過程において、膜から突出したループ構造が重要な役割を担っていることを明らかにした(Biochemistry 33(1994)9530).
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