研究概要 |
ビタミンD(D)欠乏ラット並びに骨祖鬆症モデルラットを作成して,D及び新規D誘導体の血中D代謝物濃度やカルシウム(Ca)代謝調節因子に及ぼす影響と骨密度,骨強度に及ぼす影響について栄養生化学的検討を行った。さらに,高齢者のビタミン栄養改善に関する研究の一環として,日本人高齢者血漿中のD代謝物濃度及びCa代謝調節因子の測定を行い,高齢者のD栄養改善方法について検討し,以下の知見を得た。 1.D欠乏並びに低Caの雌雄ラットを作成し,これにD及びCa代謝調節因子の濃度を変えた飼料を与え,骨密度並びに骨強度に及ぼす影響を調べたところ,低Caの状態でもDの補給が十分であれば,強い骨が形成されることを明らかにするとともに,雄の方が雌よりも大きな骨ができることを確認した。 2.新規D誘導体であるED-71は,骨に対する作用が強く,かつ,D輸送蛋白であるDBPとの結合性が強いために,血中における持続性が優れた化合物である。骨祖鬆症モデルラットに対する骨密度及び骨強度改善効果も良好で,骨粗鬆症の予防並びに治療薬として期待のもてる薬物であることを明らかにし,ヒトを対象とした臨床実験への基礎実験を終了した。 3.高齢者においては,D栄養診断の指標となる25-hydroxyvitamin Dの血中濃度が若壮年者よりも有意に低く,Dの不足状態によって高値が誘導される副甲状腺ホルモンの値も若壮年者に比べて有意に高かったので,高齢者のD栄養状態は若壮年者に比べて劣っているものと判断された。高齢者はDを多く含む魚類を好むが,Dの栄養状態が悪いのは食事の絶対量が少ないためであことも併せて確認した。 4.低D栄養状態の高齢者に200IU/日のDを含む市販の総合ビタミン剤を4週間連続服用させたところ,Dの栄養状態において著しい改善効果を認め,この量のDの連続投与方法が,有効かつ安全なDの栄養改善方法であり,有望な骨粗鬆症の予防法の1つとなることを明らかにした。
|