当初は免疫系細胞の増殖・分化因子と考えられていたサイトカインが、中枢神経系の発達や機能に大きな影響を与えることが最近明らかとなってきている。中でもインターロイキン-2(IL-2)はTーリンパ球の増殖分化を刺激することで免疫応答の調節に重要な働きをするのみではなく、ラット胎児脳由来の初代培養神経細胞の生存維持を強く促進することを我々を含めいくつかの研究グループが明らかにしている。一方、Bーリンパ球刺激因子であるIL-6もまた、中隔のアセチルコリン作動性神経細胞や中脳のドパミン作動性神経細胞に対して神経栄養効果を発揮することも我々は報告している。そこで本年度の研究では、培養神経細胞を用い、軸索損傷後の神経突起再伸展に対するIL-2およびIl-6(それぞれ1-100ng/ml)の作用を検討した。実験方法の詳細は研究計画調書および平成6年度の実績報告書を参照されたい。Il-2は損傷を受けた軸索の細胞体近位部での突起分岐数および分岐突起の長さを濃度依存的に増加させ、その作用は10ng/ml以上で対照群に比べ有意なものであった。Il-2は、また、非損傷突起の長さおよび発芽を促進する作用も示した。一方、IL-6は損傷突起および非損傷突起の両者に対して形態的には全く作用を及ぼさなかった。以上の結果より、IL-2とIL-6はともに神経栄養効果を持つにも拘わらず、培養神経細胞の形態に対してはIL-2のみに再生促進作用が認められるものと考えられた。すなわち、IL-2とIL-6の神経細胞に対する作用は、異なった機序で発揮されるものと思われる。IL-2が中枢神経細胞の再生を促したことにより、この物質が神経変性疾患治療に対する新たなツールとなる可能性が浮上し、今後さらに研究が進展することが期待される。
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