研究概要 |
シクロスポリンA(CyA)が登場して以来、腎移植の臨床では生着率の向上が認められるようになった。しかし、死体腎移植における生着率は依然として満足すべきものではない。我々は、過去に行ったステロイド剤の力価測定法の確立の中で、メチルプレドニゾロン(MPSL,)はプレドニゾロン(PSL)よりも優れた免疫抑制作用を有することを見出した。この点に着目し、昨年度からMPSLとPSLの臨床比較試験を開始した。本年度までに比較群の層別をほぼ達成し得た。即ち、生体腎移植群17症例(MPSL群10症例、PSL群7症例)と死体腎移植群27症例(MPSL群10症例、PSL群17症例)の計44症例を4群に層別した。現在までに、最長約600病日の追跡を完了したが、この段階で統計学的有意差が確認された部分として、死体腎移植群のMPSL群とPSL群の生着率を指摘できる。これら両治療群の生着率は、MPSL群で90%、PSL群で59%あり群間有意差はP<0.05であった。 このように、MPSLはPSLよりも優れた臨床効果を示すことが、初めて明らかにされた。また、生着率以外の比較項目(併用された免疫抑制剤の種類、拒絶反応の有無とその治療法、副作用の種類とその発現頻度など)に、統計学的有意差を示す項目はなかった。MPSLとPSLが患者のQOLに及ぼす影響はほぼ等しいと考えられる。 以上の結果、中間的な知見ではあるが、MPSLは腎移植のステロイド系免疫抑制剤の薬剤選択において、第1選択薬であることが強く示唆された。次年度において、全症例についての2年生着率を観察し、より信頼性の高い結論を得ることにしたい。
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