本研究の目的は、ステロイド剤(グルココルチコイド剤:GC剤)に抵抗性を示す慢性腎不全患者を識別し、腎移植術に際して使用すべき最適なGC剤を選択し、その結果として、腎移植の生着率を向上させ、かつGC剤による副作用を未然に防止して予後の改善を図ることである。本年度の研究成果を次のようにまとめることができる。 1.GC剤抵抗性は、慢性腎不全のみでなく、他の免疫系疾患にも認められ、疾患の種類によってその分布が異なっていること。これを、GC剤抵抗性の疾患別特異性と呼ぶことにする。調査した疾患は、慢性腎不全、ネフローゼ症候群、慢性関節リウマチ、気管支喘息である。 2.GC剤抵抗の有無は、患者末梢血リンパ球を培養するマイトゲン試験によって知ることが可能であること。本試験によるGC剤抵抗性は、慢性腎不全に最も多く分布しており、ネフローゼ症候群において最少であること。また、GC剤抵抗性は、慢性関節リウマチを除いて、プレドニゾロン(PSL)で顕著であり、メチルプレドニゾロン(MPSL)では発現頻度が低いこと。 3.腎移植において、MPSLを選択した場合、PSLを選択した場合よりも優れた治療成績を示し、2年生着率で比較すると、その差は死体腎移植で約20%であること。 4.GC抵抗性の薬理学的機序として、リンパ球のアポトーシス抵抗性が関与していること。この可能性は、シクロスポリン抵抗性とGC剤抵抗性の間に新たに認められた交差性を根拠とし、両薬剤によるアポトーシス誘導性を調べた結果、認められた。
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