研究概要 |
研究当初においては、ヒト羊膜由来FL細胞、ヒト肝癌由来HepG2細胞、PLC細胞におけるIFN感受性に及ぼす各種サイトカインの影響を調べたが、IFNの作用に影響を及ぼすサイトカインは細胞によって著しく異なり、肝臓由来ガン細胞と言えどもモデルには必ずしもなり得ない事が明らかになった。よって今年度はサルの初代肝実質細胞の培養技術を確立し、各種サイトカイン処理によるIFN感受性に対する影響を調べて以下の結果を得た。即ちIL-1,EGF,HGF処理サル肝実質細胞ではIFNα、β、γに対する抗ウイルス作用を抑制する事が明らかになった。一方、IFN感受性を抑制する型肝炎ウイルス(HCV)のウイルス性蛋白の存在の有無を確認するための実験を行った。まずウイルスDNAを含む発現ベクターをHepG2細胞にトランスフェクトし、ウイルス蛋白の発現細胞を樹立し、IFNα、β、γに対する感受性を比較した。IFN感受性の目安としては、VSVウイルスの産生量の減少を定量した。まずHCVの構造蛋白であるC,E,E_2が発現しているHepG2-325細胞が樹立され、この細胞のIFN感受性をベクター移入のコントロール細胞(HepG2SWX)と比較したが、両細胞間に差は認められなかった。更に、構造蛋白ではないProtease/NPTaseを含むNS3,NS4,NS5aの一部の蛋白を発現するHepG2-3296においてもIFNの感受性を調べたがHepG2SWXとの差は認められなかった。さらに今年度はHCVのゲノムの全領域を含み全てのウイルス蛋白を発現しているHepG2細胞でもIFN感受性に差は無かった。また、IFN誘起性の生体内因子として、二本鎖RNA依存性プロティンキナーゼ(PKR)に注目し、正常細胞であるヒト二倍体細胞FS-4について研究した。基質である蛋白合成開始因子eIF-2を調製して反応系に加えてPKRの活性を検出することに成功し、またPKRに対する抗体を作成して、正常細胞中ではPKRがすでにりん酸化された形で存在することを明らかにした。
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